Flash と iPhone

都内でアドビの事業説明会が行われた。
そこでは来月に発売を控える Adobe Creative Suite 5 についての紹介があったようだが、この製品の目玉機能の1つとして、Flash で作成したコンテンツを iPhone 用のプログラムに変換する Packager for iPhone という機能がある。

iPhone には Web ブラウザとして Safari がインストールされている。それに Flash Player を載せてもらえないことに業を煮やしたアドビは、Flash コンテンツをなんとか iPhone で動かそうと苦肉の策を考えた。それが Packager for iPhone である。

ところが今月になってアップルが iPhone SDK の規約を変更し、プログラムをコンバートして間接的に API へアクセスすることを禁止した。つまり先ほど紹介した Packager for iPhone規約違反となってしまったのだ。

これに肝をつぶしたアドビは、アップルを提訴することも視野に入れて水面下で様々な交渉を重ねたに違いない。

今日の事業説明会でそのことを記者から質問されると、Packager for iPhone の機能はそのままにして出荷するが、それらの機能は今後更新されないとしており、サポートする意思はないようだ。

iPhone SDK 規約変更の目的は、Flash の排撃であることは間違いない。しかしなぜそこまで Flash を忌避するのか。その理由はいくつか挙げられるが、もっとも大きな要因として App Store との競合を恐れたのではないかと考える。

アップルのエコシステムにおいて、App Store こそサービスの要である。しかしWeb ブラウザから Flash コンテンツが動作すると、無料のサービスが豊富にそろっているインターネットのコンテンツにユーザーが流れていく可能性がある。そうすると、App Store もまた無料のコンテンツを増やさなければダウンロードしてもらえなくなる。そのような悪循環を恐れているのではなかろうか。

パソコンでは無料であっても、携帯電話は有料でサービスが提供されていることが少なくない。これは、携帯のOSが閉じた仕組みで構成されており、外部と連動がほとんどできないことに起因する。つまりお金を払わないと、ユーザーは他に逃げ道がないのだ。ここに i-mode の成功があるわけだが、iPhone でも同様の戦略が見え隠れする。

ただし iPhonei-mode と異なるのは、その主要技術にはほとんど独自規格を使用していないことだ。
コンテンツの制作にもHTML5, CSS, JavaScript, H.264といった標準技術ですべて済む。iPad ではePub 形式も利用できる。さらには皮肉なことに PDF も使える。とはいっても、PDF は ISO 標準として公に認められているため、排除する必要がなかったか、もしくは取り除くにはあまりに重要な文書にまで利用されていることを認識しているからかもしれない。